【カスクフィニッシュを味わう】その3 ポートワイン

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TWDです。

「カスクフィニッシュを味わう」第2回は「ポルトガルの宝石」とも言われるポートワインです。

前回のコラム「モスカテルワイン」はこちら。

1.歴史や産地

ポートワイン(Vinho do Port)は原産地呼称の酒精強化ワインです。同じカテゴリーのシェリーやマディラが16世紀には成立していたのに比べ、ポートワインのスタートは17世紀半ばと、ちょっと遅め。

ポートワインの原産地はポルトガル。原産地呼称管理法により、醸造と熟成に、それぞれ別の場所が定められています。醸造は、ポルトガル北部を流れるドウロ川上流部の周辺地域。ドウロ川周辺はもともと切り立った崖だったそうですが、これを開墾し、今では一面のブドウ畑が広がるワインの名産地として知られます。そして熟成はドウロ川河口近くにあるポルト県の産業都市、ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア。ポルトガル第3の人口という大都市です。そして熟成したポートワインはポルト港から出荷されなければならない決まりになっています。生産拠点と保管拠点の分割、それらをつなぐドウロ川という効率的な搬送手段、保管拠点は港に隣接しており即出荷可能、という、なかなかの物流システムです。ちなみに1978年には、ドウロ川上流にあるポートワイン生産拠点のひとつ、ペーゾ・ダ・レーグアからの出荷も認められるようになったとのこと。生産後即出荷、といったところでしょうか。

 

ポルトガル北部のドウロ地方

 

ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアに密集するポートワイン生産業者のワイナリー

 

地図は、こちらこちらから拝借しました。

 

ワイナリーの情報は、AEVP(Association of Port Wine Companies )のサイトで見ることができます。

 

2.製法
ポートにせよ、シェリーにせよ、マディラにせよ、酒精強化に使用するのはブランデー(ブドウを発酵して作るアルコール液を蒸留したもの)です。ポートワインに使うブランデーはアルコール度数77%が一般的のようです。

ポートワインには、黒ブドウ品種を使うものと、白ブドウ品種を使うものがあります。原産地呼称管理法が認可するポートワイン用のブドウは29品種で、これらを混合して使用します。29品種のブドウはさらに主要品種と補助品種に分けられ、醸造に使用するブドウの60%は主要品種でなければならない、など厳格な決まりがあります。
シェリーやマディラのように単一ブドウ品種で作られることはないようで、ブドウ品種の書かれたポートワインを、私は見たことがありません。

黒ブドウの主要品種のひとつ、トゥリガナショナル種。詳細はこちら。

 

 

3.種類
ポートワインには、大きく3つの種類があります。

(1)ルビーポート
黒ブドウを圧搾、皮つきのまま発酵させ、タンニンを多く含ませます。途中、アルコール度数77%のブランデーを添加し、20%に調整し、1万リットル級の大樽またはステンレスタンクで、空気の層をなるべく作らず、酸化させないように3年以上熟成させます。

ルビーポートは、口に含むと、まずフルボディの赤ワインのような重厚なタンニンのニュアンスと、濃厚でブラックチェリーのような凝縮した果実味を感じます。どこか金木犀のような香りもあります。そして、ねっとりとした甘さ。トータルとして、かなりパワフルな味わいといえるでしょう。

タンニンを多く含んだ状態を良しとするため、長期間の熟成や保存には向かないのかな、と思います。タンニンが酸化して澱となり、そのパワフルさが失われるためです。

(2)トゥニーポート
黒ブドウを使い、ブランデー添加で度数を調整するところまではルビーポートと同じですが、トゥニーポートの場合は、主に600リットルくらいの古樽で、空気の層をしっかり確保した状態で熟成させます。

 

左がトゥニーポート、右がルビーポートの熟成樽(フェレイラ社)写真はこちらから。

熟成期間は通常5~15年。さらに長熟のものもあります。この間、空気中の酸素と反応したタンニンが澱となって樽底に沈殿しますので、これを何度も取り除きます(澱引き)。
タンニンの減少と酸化によるメイラード反応により、液体は徐々に透明度のある赤色、そして褐色へと変化します。
口に含むと、タンニンの渋みはほとんど感じられず、甘さの中に、オロロソシェリーや紹興酒、熟成させたみりん等と同様の独特な香味があります。長熟なトゥニーポートには、渾然一体の妖艶さを感じます。

20年物のトゥニーポート、「キンタ・デ・ラ・ローザ トゥニーポート20年」のテイスティングコメントはこちら。

 

 

 

(3)ホワイトポート
白ブドウを使う以外は、ルビーポートと製法はほぼ同じなようです。熟成は3~5年。それ以上熟成させると、酸化して褐色になってしまうんでしょうね。
ドライなものから、ラグリマと呼ばれる激甘なものまで、様々なスタイルがあります。
口に含むと、貴腐ワインのようなオイリーなニュアンスとバニラ系の甘みを感じます。
ポルト周辺では、トニックウォーターで割って飲むようです。

ルビーポートとトゥニーポートには、単一ヴィンテージのものや長熟のものがあり、それぞれカテゴリー名がありますが、ここでは割愛します。

 

4.カスクフィニッシュとしてのポートワイン

ウイスキーのカスクフィニッシュに使われるポートワインの樽は、どのポートワインでしょうか。ポートワインの熟成を行うポルトガルから樽を運び出すわけですから、1万リットル級の樽やステンレスタンクを使うルビーポートやホワイトポートではなさそうです。ということは、600リットル級の樽(Port Pipe-ポートパイプ-と呼称します)を使うトゥニーポートの樽が妥当でしょう。トゥニーポートの樽は古樽ですから、ピュアにポートワインのニュアンスをウイスキーに付加することができそうです。
しかし、中には、グレンモーレンジ・キンタルバンのように、わざわざ小さな樽を作ってワイナリーに送りルビーポートをいったんフィルインして払い出してもらった後、買い戻してフィニッシュに使うこともあるようです。

こうした場合、タンニンのニュアンスを強く感じるかどうか、が、元のポートワインの種類を見極めるポイントになりそうですね。

トゥニーポートの樽でフィニッシュをかけたと思われる「ティアコネル 10年 ポートカスクフィニッシュ」のテイスティングコメントはこちら。

 

わざわざ樽を用意し、ルビーポートを入れて払い出してフィニッシュに使った「グレンモーレンジ キンタルバン 12年」。

タンニンと赤ワインらしいニュアンスが欲しかったのだろうか。テイスティングコメントはこちら。

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