【カスクフィニッシュを味わう】その2 モスカテルワイン

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TWDです。

「カスクフィニッシュを味わう」第1回は、ニッカの余市、宮城峡の限定ボトルでも使われている「モスカテルワイン」です。

前回のコラムはこちら。

 

そもそも「モスカテル」とは何か。

これは「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と呼ばれるブドウの種類を指します。食べるマスカットと同じ種類です。つまり、マスカットを原料としたワイン、それがモスカテルワインです。

ちなみにマスカットはこのようなもの。白ブドウです。食べても干しブドウにしてもおいしいですね。

マスカットの実(ウィキペディアより)

カスクフィニッシュに使用されるモスカテルワインは、酒精強化ワインであることが多いようです。

酒精強化ワインとは、発酵中に蒸留酒を添加し、アルコール度数を15%以上に高めたワインです。これにより、発酵は停止し、糖分が残った状態となります。もともと酒精強化ワインは、大航海時代に繁栄したスペイン、ポルトガル、イタリアなどで重宝されました。赤道を越え、新大陸へ赴く長旅では、アルコール度数の低いワインやビールは傷んで飲めなくなってしまうからです。そのため、ヨーロッパ各地に様々な酒精強化ワインがあります。このあたりの話はまた、他のコラムで都度触れていきます。

 

さて、モスカテルワインです。

酒精強化されたモスカテルワインで、日本で割と手に入りやすいのは以下の3つだと思います。

1. モスカテルシェリー(スペイン)

2. モスカテル・デ・セトゥーバル(ポルトガル)

3. その他のモスカテルワイン(ヨーロッパ各地)

 

ひとつずつ見ていきましょう。

 

1. モスカテルシェリー(スペイン)

スペイン、アンダルシア地方のヘレスで作られる「シェリー」の一種です。シェリーは原産地呼称です。

シェリーのほとんどはパロミノ種で作りますが、一部、極甘シェリーとして、モスカテル種、ペドロヒメネス種で作るものがあります。これらは、原料のブドウを天日に干し、糖度を高めた状態で部分的に発酵させた後、スピリッツを添加します。総じて糖度は高く、中には、1リットルあたり400gの糖を残すシェリーもあります。

シェリーの特徴であるソレラ熟成をさせることで、レモンティーのような風味に加えて、黒蜜やメープルシロップのようなブラウン系のコクのある甘みがあります。かなりトロミがあり、バニラアイスや葛餅にソースとしてかけてもよいくらいです。

こちらは、バルデスピノ社のモスカテルシェリー。信濃屋など大きめの酒販店で取り扱われています。

   

 

このモスカテルワインでカスクフィニッシュをかけているウイスキーのひとつには、カリラのディスティラーズエディション(通称DE)があります。テイスティングコメントはこちら。

 

 

2. モスカテル・デ・セトゥーバル(ポルトガル)

ポルトガルはセトゥーバルで生産される酒精強化ワインで、原産地呼称です。

セトゥーバルはリスボンのすぐ南にある海沿いの工業都市。原料のマスカットも、この都市で生産されています。

味わいは、モスカテルシェリーほど熟成されていないのか、フレッシュです。もちろん極甘であることには変わりありません。ニッカの余市・宮城峡のフィニッシュカスクも、このモスカテル・デ・セトゥーバルを熟成させていた樽を使っている、とのこと。

日本で手に入る銘柄で、私が知っているのは『アランブル・モスカテル・デ・セトゥーバル』。木下インターナショナルが輸入しており、23区内では、同じく木下インターナショナルの直営バー『マディラ・エントラーダ』でいただくことができます。

 

 

このモスカテルワインでカスクフィニッシュをかけているウイスキーのひとつに、アランのモスカテル・フィニッシュがあります。ラベルにも「MOSCATEL DE SETUBAL」と書かれています。テイスティングコメントはこちら。

 

3. その他のモスカテルワイン

そもそもモスカテルは、ワインに使うブドウ品種の中でも古い品種らしく、シェリーの歴史よりはるか昔から、カトリック圏では広い範囲でミサワインの原料として使われてきたようです。なんでも教皇庁認定ブドウ品種だとか。

そのため、各地で様々な酒精強化された極甘モスカテルワインがリリースされており、頑張って探せば数種類は日本でも手に入ります。

どの銘柄も、比較的フレッシュな状態でボトリングされるようで、モスカテルシェリーほどの粘度の高いベッタリした甘さはありません。口当たりがよく、ほぼアイスレモンティのようなさわやかさで、スイスイと飲み進めてしまうが、度数が15%もあるので、けっこう危険なワインです。

こちらの『ミステラ モスカテル トゥリス』は、輸入食品雑貨大手のカルディが取り扱っているモスカテルワイン。ボトルもなんだかそれっぽいですね。なんと1,500円でおつりがくる、かなりのお得ボトルです。テイスティングコメントはこちら。

 

 

ちなみに、こちらは、フィニッシュではなく、最初からモスカテル樽で熟成させた、という珍しいウイスキー。イングランドのセントジョージ蒸留所の7年物です。テイスティングコメントはこちら。

 

最後に、香味の特徴について。

どのモスカテルワインにも共通しているのは、アイスレモンティのような香味。これは、マスカットの皮に含まれるタンニン(渋み)、リモネン(レモンのような酸味)に拠るもの、と推測します。そして、極甘の糖分。
カスクフィニッシュで、これらのニュアンスを感じることができれば、それは「あぁ、モスカテルが効いてるねぇ」ということになります。

今回、テイスティングコメントを見ていただくとわかるとおり、アランに、特にモスカテルワインのニュアンスを感じました。もしバー等で見かけたら試してみてください。その際には、ぜひモスカテルワインも飲んでみてください。

 

なお、このコラムは、シェリー専門家である、五反田のバー「シェリーミュージアム」オーナーの中瀬さんの大著『シェリー』を大変参考にさせていただきました。中瀬さん、この場を借りて御礼申し上げます。

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