【コラム・My樽熟成】 その1 そもそも樽で何が変わるのか

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TWDです。

最近「ウイスキーのMy樽熟成」をしている人が増えているようです。1-2リットルくらいのサイズの小さな樽にウイスキーを入れれば、通常の樽よりも短期間で、熟成した味わいを楽しめる、というものです。小型樽の販売店も増えており、ウイスキーブームがまだ健在であることが伺えます。日本にクラフトディスティラリーが次々とオープンし、ニューポット(樽に入れる前の無色透明のスピリッツ)が売られるようになったこともその要因なのかな、と思います。

これは、私が今年の4月に入手した、2Lの小型樽です。実際に水を入れて測ったところ、容量は1.86Lでした。

しかしMy樽熟成をしている人からは「入っていたウイスキーがなくなった」「真っ黒になって、苦いだけの液体になった」といった話もチラホラと聞きます。恐らく、いくつかのポイントで、うまくいってない部分があるのかな、と想像します。
そこで、いくつかのコラムに分けて、そもそも論(このコラム)と、私のMy樽熟成の進め方を書いてみようと思います。

このコラムでは、そもそもウイスキーを樽に入れることで何が変わるのか、を簡単に述べます。

もともと、ウイスキーの熟成に使う樽のサイズは、180リットル(バーボンバレル)、250リットル(ホグスヘッド)、500リットル(シェリーバット)が一般的です。最近は、120L前後の樽(クオーターカスク。シェリーバットの1/4サイズ)、60L前後の樽(オクタブ。シェリーバットの1/8サイズ)を使用することもあります。

これはある蒸留所の熟成庫ですが、手前にあるのがバーボンバレル、奥の上段に積んであるのがクォーターカスクですね。

樽のサイズが小さいほど、原酒と樽の内側が接する機会が多くなるため、原酒は、樽の影響を強く受けます。シェリー樽熟成のウイスキーのほうが、バーボン樽熟成のウイスキーより熟成に時間がかかる、と言われるのはそのためです。

では、樽のサイズが小さいほど、ウイスキーの熟成が早くなるのか、というと「ちょっと違うかな」というのが私の考えです。

そもそも樽の影響、とはなにか。それは主に以下の4つと考察します。

1. 樽材成分(タンニン、リグニン、バニリンなど)の溶出
2. もともと樽に液体(バーボンやシェリー)が入っていた場合は、そのニュアンスの溶出

温度や湿度の変化による樽木の膨張・収縮に伴い、
3. 取り込まれた外気の中の酸素の働きによる、アルコールと有機酸によるエステル化の形成
4. 微細な振動による、水とアルコールの会合
(水、アルコールそれぞれの分子が細かく切れて、アルコール分子が水分子の隙間に入り込むこと)

それぞれの影響により、ウイスキーのテイストはどう変わるか。

1. ウイスキーが琥珀色になり、スパイシーなニュアンス、バニラ感などが加わる。
2. もともと入っていた液体のニュアンスが加わる。
3. エステリー(華やか)なニュアンスが加わる。
4. アルコールと水が渾然一体となり、アルコールのツンツンしたニュアンスが減る。

これらの4つがバランスよく絡まり合ったウイスキーを飲むと「うまく仕上がってるな」と感じます。
だいたい20年前後の熟成期間を経たウイスキーで感じ始めることが多いです。若年のボトルと飲み比べてみるといいかもしれません。

例えば、グレンリベットの18年と12年。

グレンリベット18年のテイスティングコメント

グレンリベット12年のテイスティングコメント

または、グレンモーレンジの18年と10年。

グレンモーレンジ18年のテイスティングコメント

グレンモーレンジ10年のテイスティングコメント

各コメントを見ていただくとわかるのですが、tasters.jpに参加しているテイスターは、1.と2.のニュアンスを感じた場合、「樽感が強い」と表現します。3.と4.が備わって、初めて「熟成感がある」と表現します。

では、小さな樽であれば、これらの4つの結果が早く得られるか。

1.2.の変化を早めようと思えば、暑いところで、できるだけ小さな樽を使えばなんとかなりそうです。なるべく樽と原酒の接する機会を増やし、成分の溶け出しを促進すればよいわけですから。
しかし、3.と4.には、寒暖差や乾湿差が必要です。大がかりな装置や手間を加えるのでなければ、自宅で放置している限り、なかなか変化を早めることは難しいのではないでしょうか。また、小さな樽ほど樽木の膨張・収縮は見込めず(短い木材と長い木材ではたわみやすさが違いますから)、通常のサイズの樽ほどの効果は得られないことが推測できます。
余談ですが、もし、1.~4.が小さな樽で早くきれいにバランスが取れるなら、どの蒸留所も小さな樽を使うでしょう。そうでない、ということは、それだけ扱いが難しいのだ、ということなのかな、と推測します。

私の考えをまとめると、以下のとおりです。
・小さな樽であるほど、3.と4.の結果が出る前に、1.と2.の結果が強く出てしまう。
・小さなサイズの樽は、通常サイズの樽に比べ、3.と4.の結果は出にくい。

このことを踏まえて、次回から、実際のMy樽のケアについて書いていきます。

次のコラムは、こちら。

One Response

  1. […] 熟成感にはエステリーなニュアンスとまろやかな舌触りが必要、と以前の記事に書きましたが、フルーツのような酸味の増加と、樽詰め前にあったねっとりした舌触りの薄まりを、熟成 […]

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